2019年02月27日 10:31
味の記憶
2019.3.1 味の記憶
美味しいものを食べるとその幸せ感はいつまでも舌や心に残っている。ある日、ひょいと思い出しては懐かしくなり無性に食べたい衝動にかられることもある。おふくろの味もその一つだが、今朝の大根の煮物はそんな味だった。雪国ではどの家も春までの野菜を屋敷や畑に生けて暮らした。それも完熟した野菜ほど美味しいことを子供たちまでが知っている。今朝の煮大根はまさに完熟した越冬大根の味だった。
最近、果樹農家の奥山氏が雪室でふじリンゴを追熟させている。そのままでも十分美味しいリンゴだが雪室で再度熟成させると魔法をかけたように更に深い味わいとなり、甘味も酸味もまろやかにからみあって至福の旨さになる。雪の力で醸され、一段と美味しくなった奥山氏のリンゴもこれからは心の奥に残りそうだ。
山形山の野菜も舌や心に刻まれる味にしたい。そんな思いで何年も土づくりを重ね、種を選び、ミニ苗を育てて来た。美味しい野菜は栽培の仕方でも多少の違いは出るが、基本的には遺伝子で決まりカタログの説明には殊のほか注意しなければならない。グラビアの写真に惚れこんでうっかり蒔いて味気ないゴリゴリ野菜を育ててしまっては食べる人たちに申し訳ない。殆どの種子会社のカタログには「作りやすい、耐病性に優れている、収穫期が早い、収量が多い、形がいい」など、生産者の作りやすさだけが強調され、消費者が求める美味しい文言は少ない。
今年もミニ苗で育苗する。やはりこの育苗法は山形山での栽培に合っているようだ。生育環境に適応しやすいミニ苗は強いストレスを感じることなくのびのびし、定植後も畑の環境に直ぐとけ込んで猛烈な勢いで大きくなる。その姿を眺めるのがうれしくて雨の日も声をかけに行く。会話はできないが、テレパシーのようなものが働くのか独り言や手で触れてやると喜んでいるように見えるからうれしくなる。
働きすぎを心配する妻をよそ目に野菜とふれあう一日はやっぱりいい。でも今年は、みなさんにもご心配をかけてしまったことだし、ゆっくり働くことに決めた。
★.苦しみをともにするのではなく、喜びをともにすることが友人をつくる。 ニーチェ
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