2018年03月

2018年03月28日 12:01

2017.11.1  塩茹での落花生の旨さ
 秋日和の収穫日に二人がかりで引き抜いた落花生の根にはふっくらと稔った莢が数えきれないほど付いていた。その見事さに思わず歓声を上げてしまったが、鈴なりとはこう云うものかと思いながら、大地から掘り上げた落花生の豊産性に山形山クラブの4人も万感を抱いたようだ9月の土の声でも落花生の底力をお知らせしたが、実際、稔りを目の当たりにすると、その生命力にはあらためて感慨深いものを感じた。何しろ凄い根張りと無数の莢がびっしり付いている。一株の莢は100個以上もあり、根張りは50センチ四方にも及ぶ。しかもその根毛には落花生の栄養となる養分が窒素固定菌のバクテリアによって空気中から取り出され数珠玉のように連なって蓄えられていた。マメ科植物は窒素固定菌が働くので窒素を控えて栽培するが、落花生はそれ以上に空中窒素の利用に長けている。これだけの空中窒素の備蓄力があれば、少々の気候変化にも落花生は飢餓に陥ることなく生長できる。それを炒って保管したら救荒食品としても十分応用できるありがたい食べ物である事を再認識した。
 おもしろい凹凸模様をしている莢の正体も分かった。花が落ちた後、子房柄は土中に10センチほど潜り込み生長を始める、その凹凸模様は栄養を運ぶための栄養管であって、子房柄の先端が幾本もの細い管に分かれながら莢に巻き付き栄養を供給するように工夫されていた。まさに子房柄は動物の胎盤と同じ仕組みになっていた。そのためか少し強く引き抜いても簡単には切れない強靭さを持ち病害虫にも侵されにくい免疫力も持っているようだ。
 どんな干ばつや曇天であろうとこれほど多くの栄養を自給自足し、且つ病害虫を排除する力を備えた野菜は少ない、長い年月をかけて子孫を残す仕組みを造りだした見事な作物である。その進化を我が教訓に置くと落花生は教育野菜そのものである。歴史的には2500万年前のペルーのリマの遺跡から大量に発掘され、メキシコでは薬として食べたようだ。日本は江戸時代に栽培されたとあった。
・秋の暮れ 道にしゃがんで 子がひとり 虚子


2017.10.1  よろこびは豊饒
 秋の稔りほど心を豊かにする季節はない。生産者も消費者も秋の味覚を待ち遠しく待ち続ける。その感性は日本人だけの美的食文化なのだろうか。農家は収穫の歓びを生涯に描き大地に向かう。天候の穏やかな年は流した汗も歓びとなり、荒天の続く年の汗は実を結ぶことなく露が散る如く消えてしまうのも農家の持つ悲しい宿命でありし方がないことだ。 
 幸い今年の山形は大きな災害もなく猛暑も残暑も少ない平坦な年であった。曇天の多い年は作物が軟弱に育ち病気になってもおかしくないがそこまでに至らず助かった。それも農業試験場や種子会社が品種改良に努め、農家は栽培技術の向上に励んだからで、そのことが少々の気候変動にも動じない作物が作れるようになったようだ。
しかし、先日の超大型台風18号には肝を冷やした。眠れない長い夜であった。イネも野菜も果物も稔りの総仕上げの季節、あと少しの日差しと時おりの風雨だけで旨味成分が熟成しより美味しく結晶する瞬間であり、稲穂は旨味を調えゆったり垂れさがる。新米から立ちこめる艶めいた香りもふわありと漂い、水晶のように輝くご飯をいただける。その甘味も香りも食感も残暑と朝夕の冷え込みが拮抗するこの時期の気候が醸す美味しさである。 
そこに大型台風が来た。幸い被害は少なかったものの、もし大被害を受けていたら、みなさんにどれほどがっかりさせた味になってしまったことか、立ち去った田んぼで安堵の疲れが出た。
・百姓の足吹きすかす野分哉  子規


2017.9.1  塩茹で落花生は
 黄色の小花が慎ましやかに咲く落花生だが育ちはたくましい。夜明けとともに咲いた花は受粉が終わると花弁は離れ雌しべの細い子房柄は、さながらろくろ首のようにどんどん伸び土の中へと潜り込む。その姿はちょうど有袋類の赤ん坊が母親の乳房へと向かう様と似ている。マルチを剥がさず敷いたままにして観察すると、何と子房柄は先端から有機酸を発射しマルチを溶かしながら土に潜り込んで行ったものもある。まるで岩盤にそびえた松の木と同じ方法なのには驚きの進化と生命力を備えていた。
播種から収穫まで5ヶ月と長い生育習性もユニークでナスやキュウリやトマトなら早く咲いた花の子房から順序良く生長し稔って行くが、落花生はそんな合理性を持たない。何故か最初に咲いた一番花の莢は次に咲く二番花、三番花の莢を待ち、そして最後の百数十番目に咲いた花の莢と歩調を併せながら生長する。互助精神が高いと言うか兄妹愛が強いというか落花生には家族意識のような崇高な絆があり我先にと云う競争の原理は働かない。
本来なら長い土中生活で病害虫や雨などのダメージを受けやすいのだが、落花生のあの独特のの形や模様には子実を守る揺りかごに似た快適空間が造られているようだ。

また、生長期間の長い落花生は葉や茎や根が協力して吸収した養分を子実の栄養に加工してに供給し続ける。その涙ぐましい育てかたの背景には葉や茎に触ってみると組織が分厚くがっちりと硬いことが分かった。根も同じく土中に広く深く張りめぐらされ引き抜こうと試みても簡単には抜けない。無数のを付けながらどの子実も立派に育てようとする親株の体躯は頑丈でなければならないことを落花生は教訓として教えているようで嬉しい作物である。                                               10月は収穫期、巷で聴く「美味しいですよ、塩茹で落花生は」果してテスト的に植えた強粘土質の山形山農場で特産地のような感動の味を堪能できるだろうか。もしラッキーに育ってくれたら来年はみなさんにも食べて頂けるよう挑戦したい。

落花生を食ひつつ読むや罪と罰  虚子 

2017.8.1  完熟ニンニクはポロポロと弾ける。見た目が悪いが本物。
 コロコロと丸々に肥大したニンニクが育った。いつもの年ならユリ根の麟系を少し肉厚にした程度の六片球に満足するところだが今年は一片ごとが肥大し丸みをおびている。六片が房からポロポロ弾き落ちる物が多く六片ニンニクの美的価値は殆ど損なわれた。丸まるに育ったニンニクを炎天下で掘りながら不思議にも食欲が湧いてくる。このような心理症状は初めての事だが汗を拭きながら心は陽的になっている。
房から外れ落ちるほど丸く稔ったニンニクこそ滋養の高い本来のニンニクではないのか、素朴な疑問を自問しながら掘り続けた。掘り始めは六片がバラバラに弾けるのを見て収穫期の遅れと残念に思ったが、良く考えて見ると、どの植物も実の完熟のシグナルは房から実を弾いて発芽の段階に入るのに気付いた。 
大豆やインゲン、クリや松の実もゴマや菜種も種子は充実するまでは房や鞘に収まっているが完熟すると飛び出し子孫を残す準備に入る。それと同じ習性がニンニクにも有り決して収穫遅れとか不良品とかではなかった。この姿こそ本当の完熟したニンニクの形であることを収穫しながら新しい結論に達した。掘りたてのニンニクをすりおろすと水分が多く水っぽいものだが濃厚でトロトロと甘みを持つホッとする優しい味を昼食に味わった。
 丸まると稔った理由には、播種期の天候が良く積雪前までの草丈も15センチと理想的に伸長した。それに山形山農場の土壌改善のために入れ続けた大量の有機物もいよいよ力を発揮して来た。そして収穫遅れと思っていたのが実は収穫適期であった。この三拍子が揃い上々の育ちとなった。無農薬栽培が難しいと言われるニンニクが病気もせずに育ったということはそれだけ土壌が上質になった一因だろう。
 最近黒ニンニクが甘く、美味しく、体力改善に良いと言うので無臭ニンニクを多く植えた。普通ニンニクは臭いが強すぎて家庭や街中では黒ニンニクは造れない。でも無臭ニンニクなら悪臭がほとんど出ず庭先でも縁側でもベランダでも手軽に作れる。健康維持や改善に努めたい人は炊飯器や保温ジャーで自家製造をお勧めする。 
食べ方は多岐にわたりフルーツ風、生菓子風、ゼリーに、素揚げにしてふりかけにしても一級品の美味しさを楽しめる。全有連のお母さんは保温ジャーを段ボールに入れて熟成させると臭いが殆ど無いと言う。無臭ニンニクの収穫は726日から始まり、お届は8月上旬からです。年間通して食べたい方は早めに確保してください。作り方は保温ジャーに入れて2週間待つだけ。
黒ニンニク:手づくり価格 房㎏/700円。完熟ポロポロバラ㎏/900
夏の雲朝からだるう見えにけり 一茶   今日は35℃の猛暑日だった。


2017.7.1 古代人とアマドコロの健康法
先日、妻からアマドコロを紹介する切り抜きを渡された。内容はアマドコロの薬効の素晴らしさであった。薬草の研究家、村上光太郎氏(崇城大学教授)の著書、『食べる薬草辞典』から引用とあり。早速著書を取り寄せるとアマドコロの優れた効能効果が綿々と紹介されていた。
❶アマドコロの利用歴史は古く、卑弥呼の時代に中国で書かれた『神農本草経』にはアマドコロは生薬として広く利用されていたと云う。
❷山形山農場ではアマドコロの美味しさに魅かれ栽培して来たが、太古の学者が薬草としてベタ褒めしている事に正直驚きと感動を覚えアマドコロの価値観が変わった。
❸薬効については、・老化を防ぎ・やる気を出し・肌も気持ちも良くなる。食べ方は、若芽をお浸しや炒め、春先の若芽はアスパラガスに似て美味しい。サッと茹がいて酢味噌、辛和え、バター炒め、卵とじ、天婦羅などにしても良い。
❹珍しい料理としては、花の和え物、おすまし・甘酢、辛酢、酢味噌で味わう。すまし汁には錦糸卵と一緒に使うと彩の良い一品となる。
❺薬効の素晴らしさとは、シミ、そばかすには ・根茎の美肌パック、生の根茎をすりおろし、少量の小麦粉を混ぜてパック剤として使用すれば、そばかすやシミがとれる急いでいる時はすりおろして直接塗布しても良い。とある。
❻神農本草経(217年)では、秋に収穫した根茎を乾燥し、生薬(玉竹)として使った。
煎じての効用は、滋養、強壮、強精、消炎、鎮咳、老化防止に効き、血圧を調整、強心作用、血糖降下作用、腸を潤し便秘を改善する作用がある。
❽特に乾燥した根茎を焼酎に浸け込んだアマドコロ酒は、強精強壮効果が強く、長寿を約束し体力の若返りをはかり、あらゆる生活習慣病の妙薬になる。『焼酎の15%の氷砂糖を入れると飲みやすい薬酒になる。米山』
❾毎日服用しなくても、疲労の激しい時だけ服用しても効果が得られるのが特徴である。46月に咲く可憐な花は「茶花」や「生け花」、観賞用に用いられるが食べても良い。
★以上の効能効果が述べられており、6/24サクランボ狩りに参加した方々に根茎を掘り起こしお土産として持ち帰って戴いた。特に❺~❾迄の薬効が気に入り、私も試してみることにした。
★希望される会員さんには1000円で根茎をお分けします。事務局までご連絡ください。
❺シミ、そばかすの効用を希望される方は7月中にお届け。
❼煎じての効用を希望される方は、11月にお届けします。
(野菜やコメと同梱。使用後の感想はお寄せ下さい)


ギャラリー
  • コメと野菜と鶏卵と
  • 色の濃い葉物野菜は危ない
  • 食はいのち 希望を語り学ぶ
  • 感謝と涙の一年でした
  • ウバユリの願い
  • 大粒でうまいコメが誕生  『新開発米 やまがたびより・元気長寿米』
  • コオロギの食欲に脱帽
  • 試食で味を高める
  • 美味しい野菜は高栄養価